また、人が自分の業を背負って生きてゆく姿が描かれるのも魅力の一つでしょ
う。
決して幸せな末路をたどるとは限らない主人公達はそれでも、その人生を精一
杯生き抜き、歴史に小さく、あるいは大きな足跡を残していきます。
ステレオタイプ的な登場人物とは違った、人物像が描かれるのもこの漫画の大
きな特徴です。
例えば『黎明編』の主人公ナギは、彼の一族を惨殺した邪馬台国の防人、猿田
彦に対して深い恨みの念を抱き、復讐を誓いますが、いつしか猿田彦の人柄を
尊敬するようになり、親子にも似た感情が通いはじめます。
同作で熊襲一族を滅ぼしに来た、いわば悪役であるグズリも単なる悪役として
描かれているのではなく、その物語の唯一の生存者となり、熊襲一族復興の中
心人物となって行きます。
また、『鳳凰編』における盗賊・我王が後年仏師としての生き甲斐を見いだし
ていく過程や、その我王にかつて腕を傷つけられ、絶望のなかから努力で自分
を高めていく仏師・茜丸の姿など、登場人物は決してスーパーヒーローではな
く、血の通った人間と感じられるような描かれ方をしています。
私個人について言えば、私が『火の鳥』と出逢ったのは、まだ小学生の頃でし
たが、その人物描写はそれまで親しんできた、物語的な物(小説、マンガ、ド
ラマ他)では得られなかった、物事の見方に気付かせてくれた作品でした。
この『火の鳥』は、ハッピーエンドの物語がもたらしてくれる胸のすくような
カタルシスとはまた別種の感慨を読者に与えてくれるのです。
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