ブルース・リー フィルモグラフィ

ドラゴン危機一発 (1971)
 唐山大兄 The Big Boss

制作配給・香港・嘉禾電影(ゴールデン・ハーベスト)(1971.10.31〜1971.11.22公開)
日本配給・東和 (1974.4.13公開)

制作・鄒文懐(レイモンド・チョウ)、監督・羅維(ロー・ウェイ)、アクション指導・韓英傑(ハン・インチェー)、北京語版音楽・王福齢(ワン・フーリン)、英語版音楽・顧嘉輝(ジョセフ・クー)
キャスト:ブルース・リー=鄭潮安(チェン・チャオワン)、衣依(マリア・イー)=林巧梅(リン・チャオメイ)、田俊(ジェームズ・ティェン)=許剣(シュウ

・シェン)、李昆(リー・クン)=阿昆(グン)、韓英傑(ハン・インチェー)=沙密(マイ)、劉永(トニー・リュウ)=沙子、金山=阿三、馬麗蓮(マラリン)=烏曼(ウー・マン)、陳着=工場長、陳會毅=阿畢、林正英=阿陰、杜家[木貞]=三叔、植櫂昌=阿昌、苗可秀(ノラ・ミャオ)=攤販女、他

概略

ブルース・リーが香港に戻っての主演第1作。
鄭潮安=チェン・チャオワン(リー)は出稼ぎで田舎からタイの町に住むいとこ・許剣=シュー・シェン(田俊)の家にやっかいになる。シューの計らいで一族が皆働いている製氷工場で働く事になるが、実はこの工場は陰で麻薬売買をしている悪人の経営する工場で、秘密を偶然知った仲間が殺されて行く事にチェンの復讐が始まるというストーリー。
オーソドックスな復讐物ですが、ここで見せるリーの姿がその後の『燃えよドラゴン』のようなギラギラしたような目つきではなく穏やかなまだあどけなさを残した顔つきが印象的な一編です。

18才の渡米以降アメリカでの成功を夢見ていたブルース・リーでしたが、思うようには行かず苦渋を舐めていた彼は香港に帰ろうかと考え香港の映画会社に自分を売り込もうと一時帰国をしたところ、母国ではいつの間にか自分が有名人になっていて凄い歓迎を受ける事に驚きます。当時香港でリーが以前出演した『グリーンホーネット』がオンエアされて大きな話題となっていたためでした。リーはテレビ番組でインタビューを受けたりもしますが、そんな彼に目を付けたのが嘉禾電影(ゴールデンハーベスト映画)を設立したばかりのプロデューサー、レイモンド・チョウで、リーと2本の出演契約を結び、この映画が作られる事になりました。
当時としては破格の出演料でリーと契約したのは良いものの、映画製作予算が全くなく、タイのお菓子メーカーなどからの出資を漸く取りつけタイで撮影が行われました。
結果、この作品は当時の香港映画のあらゆる記録を更新する大ヒットとなり、ブルース・リー(映画会社も)の境遇を大きく変える作品となりました。

日本では74年に東和映画によって公開されていますが、「燃えよドラゴン」公開以前に実は東和にこの映画の売り込みがあり、しかし香港最大のヒット作といえども日本では客を呼べる可能性は低いとして買わないでいたところ「燃えよドラゴン」を見てビックリ、慌てて買い付けたとか。
『ドラゴン危機一発』というヒドい邦題も、取りあえず公開ラインナップに載せる為、映画の内容も考えずに適当につけられた物だそうです。

ひどいタイトルといえばアメリカで公開された時のタイトルもひどいですね。本来は当時アメリカで大ヒット&絶賛された映画『フレンチ・コネクション』(シカゴの刑事がフランスルートの麻薬密売組織を捜査する話)にあやかって『チャイニーズ・コネクション』というタイトルで公開しようとしたものの間違ってこの映画と「怒りの鉄拳」とを逆の名前で公開してしまった(^_^;)。ということでアメリカでは「Fists of Fury」の名で知られています。

この作品ではリーのトレードマークとなった「アチョー」という”怪鳥音”と呼ばれる気合いも無く(現在日本で見れる広東語版は後から怪鳥音をくっつけた物、しかし画面のリーの口の動きを見ると撮影時には叫んでいるようではある)、ヌンチャクもなし。しかし、当時香港のカンフー物ではリーの様にキックを多用したアクションはなかったので香港でも斬新的なアクションとしてすぐ他の映画でもまねられるようになったようです。
この映画のアクション指導はリーではなく、この映画でボスを演じた韓英傑によるものですので、その後の映画で見られるリーのアクションとは若干スタイルが違い、どちらかというと初期のジャッキー・チェンのタイプに似ている物もあります。しかし、ジャッキー・チェンの様にアクロバット的(?)な物ではなくあくまでもストリートファイト的なリーのアクションがリアリティのある迫力を生み出しています。
リーの技を見ると元来禁じ手とされている技も構わず使うのが特徴です。足技自体も本来は汚い技とされていたようですが、リーの場合だと相手の攻撃をかわすために噛みつきや急所攻撃まで何でも使うのが面白いですね。

幻のシーン

映画のスチル写真ではリーがノコギリで敵の頭を攻撃する(残酷ぅ〜)写真をよく見かけます。(右図参照)
これは製氷工場での死闘のシーンにあるべきシーンですが、現在ビデオ化されている物の中にはこのシーンはないですね。(直前のリーがノコギリを振りかざす所はある)
香港の劇場初公開時にはあったそうですが、残酷という事でその後カットされたようです。
日本の初公開時はこのシーンはあったのでしょうか?見たような気もするし、なかったような気もするし、私は覚えていません。
少なくともその後TVでオンエアされた物やビデオではこのシーンを見ることはできません。

97年に日本で再発売された広東語版ビデオ&英語版LDに付録として収録されている香港版予告編には実際の映画では見ることの出来ないシーンが収録されています。
一つはジェームス・ティエン演ずるシュー・シェンがなにやらケンカの仕方のような物を語っているようなシーン。もうひとつはリーが女性(マラリン演ずるウーとは別人のタイ人)を押し倒して(^_^;)裸になるシーン。一体どういうシチュエーションなんでしょうね(^_^;)、気になります。

ドラゴン危機一発・音声の謎(バージョン)

『ドラゴン危機一発』には様々なバージョンがありますが、基本的に映像の違いは殆どないもののバージョンによって音楽などがまるっきり違う物が何種類もあります。日本で劇場公開された時、そのサントラと共に親しんだ物は、実は日本の配給会社により改変された物でオリジナルは全く違う事を後年知る事になりますが、一体どういった経緯で作られたのか、私は未だに分かりません。ここではこれまで私が目にしたバージョンを記して置きます。

■北京語版■

香港版ポスター香港のオリジナル制作時は北京語で制作されている事を考えるとこれがオリジナルバージョンでしょうか?
しかし、統一された音楽は一切なく既成曲を使用しているような雰囲気です。クレジットを見ると王福齢という人が担当しているようですが、日本の『大魔神』や『サスケ』などの音楽も聴こえます。同時期に作られた英語バージョンは統一されたテーマ曲がありましたが、それとも全く違うのは何故でしょう?英語版の中にはタイトル曲が北京語版主題歌が用いられているバージョンもありますが、その主題歌はこの北京語版では使われていません。私は香港の劇場初公開時に見ている訳ではないので何故だかさっぱり分からないのですが、こちらの音楽は王福齢単独のクレジットで、当時の日本の公開資料ではジョセフ・クーと共同と書かれている事から察すると、まず北京語版で王福齢が音楽を担当し、海外用のバージョンが作られる際にジョセフ・クーが改めてスコアを書いたというのが事実のようです。ということで、やはりこれがオリジナルのバージョンのようですね。
現在香港製の輸入盤ビデオCDで比較的手に入りやすいバージョン。

■英語版1 オリジナル版■

英語版による映画&ビデオソフトは複数のバージョンが出ていてどれがオリジナルなのかは判断しづらいのですが、少なくとも日米でビデオ発売されている物の中ではオリジナル版がそのままソフト化されている物はないようです。
音声面ではポニーキャニオンからリリースされた2カ国語版LDの英語音声や米・FOXビデオの音声がオリジナル英語版音声です。
音楽は日本劇場公開時の物と共通点はあるもののかなり違っていて、挿入歌もありません。
画面的にはオープニングタイトルの映像は香港版と同じ「唐山大兄」のロゴがコーラージュされる物と、アメリカ版(リバイバル版)や日本劇場初公開版、TV放映版、国内版広東語版ビデオで見られる「唐山大兄」ロゴが入っていないデザインのものをベースとした物の二通りが基本的にありますが、制作の経緯から判断すると前者の方がオリジナルの様ですね。前者の映像は97年11月にビームエンタテインメントからリリースされた英語版レーザーディスクの映像部分がこれにあたります。
下記であらためて書きますが、97年にレイジング・サンダーによりリバイバルされた物(上記英語版LDと同一バージョン)も基本的にはこのバージョンと変わりません。

■英語版2 ダブ・ミックス版(TVオンエア版)■

テレビ朝日の日曜洋画劇場などで放映された2カ国語英語音声のバージョン。
上記英語版を元にしていますが、それに被さって多くの音楽がダブミックスされていたり差し替えられています。ジョセフ・クー作曲と思われるオリジナルのBGMに被さってミックスされているのは映画「大魔神」サントラ等からの既成曲を流用。オープニングタイトルの画面は「唐山大兄」ロゴが入らない国際バージョン。
オープニングタイトル曲は「鋼鉄の男」北京語版でエンディングも同曲のスローバラードバージョン。
オープニングでは主題歌が終わるとオリジナルの英語版にあったテーマ曲に音声が戻ります。
これが東和配給版の元となった物なのでしょうか?ダブミックス自体は香港側で作られた物なのでしょうか?北京語の歌が良くないと言うことでオープニング&エンディングを日本側で変えたものが劇場公開版なのでしょうか?
それにしては北京語版でこの主題歌が使われていないのは何故でしょう?、或いは主題歌が流れる北京語バージョンも存在するのでしょうか?またこの北京語版「鋼鉄の男」はサントラの英語版と全く同一のオケを使用しているのも不可解です。
当時香港で「唐山大兄」という歌のレコードがだされたそうですが、それの流用なのでしょうか?
日本公開版がオープニング&エンディングが東和の手によって差し替えられた物であるなら、製氷工場の死闘でこのオープニング曲が流れるのはどうして?
やはりこれは香港側で制作された英語版第2バージョンと見るのが正しいのでしょうか?
謎です。
『映画秘宝/ブルース・リーと101匹ドラゴン大行進!』(洋泉社・刊)の当時の東和の担当者インタビューによれば、日本劇場公開版ではエンディングとオープニングを入れ替えたとの事ですが、確かに日本公開版ではエンディングで流れる『鋼鉄の男』がこちらはオープニングで流れており(エンディングも同じ曲ですが、、(^_^;))、そこから察するとやはりこれが日本初公開時に東和が入手したフィルムのオリジナルの可能性が高いですね。
地上波の地方ローカルTV局の深夜映画枠などでヒッソリと放映される2カ国語放送で見れる可能性あり(?)。

■英語版3 東和配給日本版■

東和版チラシ日本劇場初公開版。上記ダブ・ミックス版と殆ど同じですがタイトルのテーマ曲は日本のサントラで”メイン・テーマ”とされてたインスト曲に差し替えられています。公開当時のサントラの音声もこれ。エンディングテーマはサントラでは「鋼鉄の男」と題されていた英語版主題歌。私が殆ど記憶にないのですが、タイトルは「唐山大兄」のロゴをバックとしたもの(ビーム版LDと同じ画面)だったそうです。
上記『映画秘宝/ブルース・リーと101匹ドラゴン大行進!』の東和の担当者インタビューで日本側でかなり音声に手をいれているとの事ですが、後に作られた広東語版にもこの音楽が使われているのは何故でしょう?後年作られたドキュメント映画『ブルース・リーの神話』でも「危機一発」からのシーンが紹介されるところではこの日本版テーマ曲と愛のテーマが使われています。謎ですね。

■東映配給日本版(英語)■

東映版チラシ1983年10/22に東映がリバイバル公開した物は、私はその時、劇場で1度見たきりなので殆ど記憶にありません。
オープニング&エンディングが上記TVオンエア英語版と同じ北京語版主題歌だったと記憶しています。
本編の音楽はどうだったか記憶にないのですが、上記TVオンエア版と全く同じ物だったかもしれません。とすると東映は東和のフィルムを使い回したのか、それともやはりこれが香港版の第2英語バージョンなのでしょうか?
謎です。

■広東語版■

後年、リバイバル公開時に制作された広東語版。ブルース・リーの他の作品から怪鳥音が付け加えられているのが他のバージョンと大きく異なっている所です。
また音楽はというとこれまた他のバージョンとは全く違っていて、折角英語版で統一した音楽があったのにこちらは既成曲が使用されています。
しかし、オリジナルの英語版にはなく東和バージョンで聞こえたBGMのみ共通したシーンで流れるというこれまた良くわからないバージョンです。
日本で現在出ている広東語ビデオの音声部分がこのバージョン。

■英語版4■

レイジングサンダー版チラシ1997年9月27日にレイジングサンダー配給で日本公開されたバージョン。これでまた新たなバージョンが増えました。
基本的にはオリジナルの英語版と変わりません。但し、一カ所クライマックス直前のリーが仲間の復讐を誓う時のリーのモノローグが新たに録音された物(「ドラゴンへの道」でリーの声を吹替えた人の声)と差し替えられていて、この部分だけ音楽が北京語版(&日本語吹替版)と同じ音楽が流れます。以前の物は何かしら表現に問題箇所でもあったのでしょうか?
オープニングタイトルの画面は国際共通バージョンではなく香港版タイトルと同じデザインの画面に英語クレジットがインポーズされたオリジナル英語バージョン(?)。
このバージョンは97年11月にビームエンタテインメントから発売された英語版レーザーディスクで見ることが出来ます。

■ドルビー・デジタル版(広東語&北京語)

98年10月に香港でリリースされたDVDの為に制作された音声。
北京語と広東語の二種類がありますが、どちらも台詞は新たに録音されています。これまでの広東語版と違ってこちらでは怪鳥音はありません。
効果音やBGMは上記広東語版音声を元に5.1ch疑似ステレオ化されているので東和版などで聴けたジョセフ・クーの音楽が流れます。このバージョンは香港盤DVDでのみ聴く事が出来ます。

■おまけ 日本語吹替版(TVオンエア版)■

テレビ朝日の日曜洋画劇場などで放映された日本語吹替バージョン。
この日本語吹替音声の音楽は、当時見た時は英語版と全然違う!と憤慨したりしましたが、後に北京語版を見て判った事は日本語版のSEは北京語版音声と同じ物を使っているという事でした。ということで、音楽は基本的には王福鈴の物が流れている訳ですが、独自に日本公開版で聴けたジョセフ・クー作曲によるメインテーマ、同リプライズバージョン、愛のテーマ、フィナーレの4曲が随所に加えられています。オリジナルの北京語版以外のバージョンでは最も北京語オリジナルに近いバージョンですね。因みにリーの吹き替えは藤岡弘、ボスのマイは大塚周夫でした。

ビデオソフトいろいろ

■国内版■

これらは全て同一のマスターによる広東語版。香港では通常中国語&英語字幕付きで上映されるのが通例の為、このビデオは字幕が付かない海外輸出用のフィルムを使用していますが、その為タイトルの画面は香港公開版とは違う英語版等で使用された国際バージョンで、しかもタイトルのスタッフキャストのスーパーも入っていないものでした。現在日本で最も一般的に知られているバージョン。エムズ・ピクチャーズからの再発物は香港版予告編(北京語&広東語)付き。ポニーの物は絶版。

■アメリカ版■

■香港版■

■シンガポール版■

■台湾版■

中国の字幕はあとからビデオ上で追加されています。NTSCベースの映像なので、日本のVCDorDVDプレイヤーで再生しても画面の違和感はありません。

■韓国版■

■中国版■

サントラ盤あれこれ

日本で劇場初公開時に発売されていたTAMのサントラ盤は全て日本独自に制作された物で当時の日本公開英語版が元になっています。

Side A:メインテーマ(The Big Boss) Side B:愛のテーマ(Love Theme from "The Big Boss")

上記アルバムよりシングルカットした物。日本公開版はオリジナルの英語版に様々な既成曲が加えられていますが、「愛のテーマ」の前半部分のセリフ(チャオ・メイが泣くのをチェンが慰めるシーン)のバックに流れている曲は『大魔神怒る』(笑)サントラから伊福部昭大先生作曲の「神への祈り」。因みに「大魔神」のサントラは複数のメーカーによってCD化されていますので、「危機一発」より入手しやすい音源です。

 (※以下は再録物のサントラ)

 

  フィルモグラフィに戻る

Last Modified 3,Jul. 2000 takeboh@takeboh.com