| 「早知當初我唔嫁」 Too
Late for Divorce '56 白黒 字幕なし |
これはひどい!滅茶苦茶過ぎて、もう笑うしかないメロドラマであった。悲恋ものらしいが…。
未亡人である岸田今日子そっくりなおばさん(芳艶芬)は、自分のバカ息子(これがリー先生!)の家庭教師として雇った“男役のおばさん”(任劍輝)にホレてしまい、“男役のおばさん”の方もまんざらではなく、ラブラブな関係になる。おっと!ここで注意してほしいのは、“男役のおばさん”は本当は女性が演じているのだが、あくまでも、この映画の中では“男性の役”を演じているので、共演者はおろか、我々罪のない観客までも、有無を言わせず、否応なしに、彼女を「男」と見なくてはならない鉄則なのである。
元来、このおばさんは舞台などの粤劇(廣東オペラ)で「男役」を専門にやってた人なので、それをそのまんま映画の世界にも持ち込んで、もうこの人が登場したら「とにかく男なんだ!」と万民が思い込まなければいけない!パブロフの犬の様に、「このおばさん=男!」と万民が素早く反応しなければいけないという暗黙のルールがある。しかし、時代劇ならともかく、現代劇('56年当時の等身大の人々を描いた現代劇であった!)なのに…!しかも宝塚みたいに全員女性って言うんならともかく、実際に本物の男優がたくさん出演している中にあって敢えて「女が男役をやっている」という不自然さに、私のような外国人は慣れていなかったので、このルールを理解するのに時間を要した。
ましてや相変わらず字幕なしのくせに、歌うシーンになると、歌詞のみ(!)それも中国語のみ(!)字幕が(横書きなのに)右から左へ書かれるのであった。“男役”は歌詞を全く無視して、一字一句の後に「呀〜(あ〜)」などという無意味な言葉を付け足して、「私あ〜は、あなたあ〜を、愛あ〜してあ〜るあ〜♪」といった要領で自分勝手にアレンジした歌を、延々と15分も20分も歌い続けた。セリフが突然、ミュージカルの様に歌に変わるのであった。そして歌に変わった瞬間、今まで無かった字幕(中国語のみ!)が、右から左に書かれるのであった。
ある日、バカ息子(リー先生)が、家の前の道路で車にバーン!とはねられる。なんか、自分から「当たり屋」みたいに突っ込んで行った様に見えるはねられ方だが…派手にすっとばされた割には、ただひざっこぞうをすりむいただけのケガで済み、しかも!しかも、である!なんと16歳にもなって「媽〜!好痛呀〜!媽〜!」(ママ〜!痛いよ〜!ママ〜!)と、激しくしゃくりあげながら、泣き続けるのであった!あのリー先生が、よ!
子役とは言え、16歳ともなれば、もう体格も大人だし、顔も晩年のあのリー先生の顔にほぼ近いのに、それが「ママ〜!」と言って泣きじゃくっているなんて…なんだかとんでもないものを見てしまった様な、開けてはいけない玉手箱をとうとう開けてしまった様な気がして、なんとなく周囲をキョロキョロ見まわすと…またしても、いた!ロシア人(推測)セルゲイが、私の斜め左後ろの席に陣取っていた。
彼はいつも1人で来ている。服装の汚れ方もいつも同じだ。いや、日に日に汚れも激しくなっている?!無表情で微動だにせず見ているが、セルゲイよ、一体何が目的なのか?そろそろ明かしてくれてもいいのでは…?まさか私の命をつけ狙ってるわけではないよね?
話を映画に戻すと、バカ息子(リー)をはねた車の運転手は、車を降りて、すぐにバカ息子を抱きあげて、母親(ヒロインの岸田今日子似おばさん)の元に運ぶ。
そして、息子を乱暴にズザッ!とソファーに投げ降ろすと、いきなり岸田今日子にその場でホレて、ラブラブ・ビームを発散させる。岸田もまんざらでもないってカンジ。
ところで、そのリー先生を車ではねて、母・岸田にホレる男、(これは正真しょーめいの男ですが)高島忠夫似の当時の二枚目スターで、今でもよくTVに出ている“胡楓”という男優である。
そこで、“岸田”をめぐって、“男役のおばさん”対“本物の男”との三角関係にもつれ込む。最終的には、岸田がさんざん悩んで、泣いて、20分間くらい歌い続けて、尼寺に入る。
当時の、まだまだ解放されない女性の自立とか、悲恋とかを描いて、女性客の共感を呼び、涙を誘おうとしたかったんだな…との狙いはわかるんだけど、あまりにも突飛なストーリー展開に、申し訳ないんだけど、ただもうゲラゲラ笑うしかありませんでした。
途中でフィルムがいきなりブチッ!と切れて場内いきなりまっ暗になり、次に明るくなり、「しばらくこのままお待ち下さい。」のアナウンスの後、少し飛んだシーンからまたフィルムが再開したのにも笑いを禁じ得なかった。これは史上希に見るひどい作品だった。見れて、とてもラッキーかも。
<その1>
バカ息子役のリー先生が家庭教師(男役のおばさん)相手に、当時流行のダンスを踊るシーン。いかにも「ボンクラ」らしく、「イカレポンチ」らしく、今風に言うと「ヤンキー」らしく「うひゃっほおおおーう!!」とか「ふーーーっ!ふふふーう!」など、マイケル・ジャクソンの様な裏声系の奇声を発するのには度肝を抜かれる。本物のヤンキーみたいよ。
しかも、夢中になって猫背で踊り狂っている時、常に口が動いているのが不気味。口の中で小声で何か「シャカシャカシャカシャカ」言い続けているようだ。チャチャ・ダンスを踊っていたので「チャチャチャ」と言っていたのかもしれない。顔は眉間にしわ寄せて、目は完全にイッちゃってるし、これは演技なんてもんじゃなく、普段からこういった「イカレポンチ野郎」だったんだろうなーと思える。でも、考えてみれば、後年、ヌンチャクを振りまわす時も、なんか口が動いていたし、奇声も怪鳥音(いわゆるアチョー!)の原型だと思えば、まっ、納得いくか。。。
<その2>
蛇!“男役のおばさん”と“岸田今日子似のおばさん”、この“おばさん同志”の山の中でのデートにバカ息子ものこのこ連いて来て、突然「蛇」に遭遇!“男役”が「あっ、蛇だ!あぶない!」とかなんとか言ってると、その“男役”が蛇にかまれて、いきなり入院してしまう。かなり強引な展開だ。
その時の「有蛇呀!」(あっ、ヘビだ!)とか叫ぶ“男役”の顔の「目の見開き方」「驚き、恐れおののくゆがんだ顔」「ミョ〜な緊迫感と臨場感」かと思うと「ミョ〜になごむ脱力感」に、場内、もう爆笑のるつぼと化しました。そう、その“男役”は決して「ハンサム」でも「美人」でもなく、どちらかと言うと貧相に崩れたご面相なので、緊迫した状態で「ヘビだ!」などと発言した日にゃ〜、もう笑いの導火線に火がついて、今までの釈然としない思いを一気に吹き飛ばす我々でした。のちにリー先生は「燃えよドラゴン」('73)の中で、また「蛇」を小道具として使うことになりますが。
前のページ 次のページ
|