ブルース・リー フィルモグラフィ

ドラゴン怒りの鉄拳 (1972)
 精武門 Fist of Fury

制作配給・香港・嘉禾電影(ゴールデン・ハーベスト)(1972.3.22〜1972.4.19公開)
日本配給・東和 (1974.7.20公開)

制作総指揮・鄒文懐(レイモンド・チョウ)、制作・劉亮華(リュウ・リャンファ)、監督・羅維(ロー・ウェイ)、音楽・顧嘉輝(ジョセフ・クー)、アクション指導・韓英傑(ハン・インチェー)
キャスト:ブルース・リー=陳眞(チェン・チェン)、苗可秀(ノラ・ミャオ)=麗兒(リ・エー)、田豐(ティエン・フン)=范(ファン)、魏平澳(ウェイ・ピンアオ)=胡恩(ウー)、羅維=華(ファ)署長、橋本力=鈴木寛、馮毅=吉田(兄)、ロバート・ベイカー=ペトロプ、韓英傑=馮(フェン)、黄宗迅(ウォン・チュンスン)=吉田(弟)、勝村淳、衣依(マリア・イー)、田俊(ジェームズ・ティエン)、李昆(リー・クン)、劉永(トニー・リュウ)、金山、他

概略

香港で当時の記録を更新する大ヒットになった映画で、香港やアジア圏では「燃えよドラゴン」よりむしろこちらの方が評価が高い傑作です。個人的にもこの映画がリーの映画の中でも一番好きです。リーの映画を見た最初がこの映画が最初ということもありますが、なによりリーの映画の中では一番話がまとも(^_^;)。リーの作品中でも最も亜流作品を生んだそういう意味でもアジア圏での影響力が一番強く(なにしろこのフィクションが実話だと信じられてるくらいですから)アジアの人々の心に残っている作品です。

大日本帝国の勢力下の上海。中国でその名を知らぬ物はいない精武館道場の創始者・霍元甲の死に疑問を持った優秀な門下生・陳眞(チェン・チェン)は、度重なる嫌がらせを行う日本柔術道場の陰謀で恩師が殺害された事を突き止め、黒幕・鈴木と対決する。

ストーリーは実在の武道家・霍元甲(フー・ユンチャ)の死因をめぐる謎解きのストーリーで、巷で囁かれていた”日本人の毒殺説”の立場で描かれています。今でいうと「JFK」みたいな立場の映画。そういやリーが死んで彼自身が伝説となり、その死因についても様々な憶測が飛んで「ブルース・リーを探せ」なんて映画もありましたっけ。出来は比べ物にならないですが、、(^_^;)

この映画で初めて世にでた「怪鳥音」と呼ばれる気合いと共に、ヌンチャクVS日本刀の闘いなど、優れたドラマとアクションが組合わさって質の高い作品になっています。個人的には戦前の日本によるアジア支配の事実など、それまで教科書では伺い知る事が出来なかった面を知って”多面的な物の見方”というものを教えてくれた映画です。
悲壮感溢れるエンディングも素晴らしいですね。

陳眞の身を案ずる恋人・麗兒を演ずるドラゴンシリーズ永遠のマドンナ(?)苗可秀(ノラ・ミャオ)の清楚で可憐な美しさにもやはり魅了されました。当時映画雑誌の人気投票でもいつも1位でしたね。ウルトラシリーズのアンヌ隊員と共に(笑)忘れられないヒロインです。

印象的な悪役・鈴木役は当時大映の橋本力(映画『大魔神』の縫いぐるみの中に入ってた人、因みに”大魔神緒形拳説”はデマ(^_^;))が憎々しげに演じていますが、ゴールデン・ハーベストから当時親交のあった大映・勝新太郎のプロダクションにキャスティングの依頼があり、勝新からの呼び出しで殆ど騙された状態で香港に行かされたとか(^_^;)。ラストの彼のスタントをジャッキー・チェンが担当していたというのは有名な話ですね。
このへんの裏話は「映画秘宝・ブルース・リーと101匹ドラゴン大行進」(洋泉社)の橋本力氏のインタビューなどでディテールが紹介されています。この本は他にも「怒りの鉄拳」に関する話が多々紹介されていて面白いです。
この映画に登場する日本人がはいている袴が後ろ前なのが笑っちゃいますが、橋本氏とかが衣装さんに指摘したにも関わらず聞いてもらえなかったとか。橋本氏が登場するシーンだけは他の人も袴を正しく履いてます。そう言えばコックの田が実は日本人だったと判るシーンもハラマキをしている事で判るというのがなんか可笑しいですね。

ジョセフ・クーによる音楽は打楽器を中心としたワンポイント的なBGMでなかなか効果的でした。基本的にはジョセフ・クーが作曲していますが、テーマ曲とそのバリエーション、打楽器によるBGM以外は既成曲を流用しているようで、そのBGMの殆どはイギリス映画『小さな冒険者』(Flight of the Doves 1971年)のサントラに収録されている「Here Come the Hawk」という曲(作曲はロイ・バッド)が使用されています。(情報提供:Jadeさんに感謝)

この曲は最近イギリスでCD発売された同サントラ("Flight of the Doves" 英・Cinephileレコード 品番:CIN CD 010 限定盤 1999年)で聴く事が出来ます。このサントラからは他に"A Drop O' The Irish"という曲が映画の大団円などのBGMとして使用されてます。
他にはクライマックスで陳眞のキックですっ飛んで行く鈴木(笑)のバックではジョルジ・リゲッティの「無限の宇宙(アトモスフェール)」(恐らく音源は「2001年宇宙の旅」のサントラでしょう)が流れ、その後陳眞が天を仰ぎ見るシーンで流れている曲はエルトン・ジョンがテーマ曲を担当した映画『フレンズ』からの流用。同作のサントラで聴くことができます。その他にも他で耳にした事があるBGMが2、3ありますが私は曲名はしりません。

霍元甲とは

この映画に(遺影だけ)登場する霍元甲という武道家は日本では殆ど知られていないですが(当然ながら私も知らなかった(^_^;))、中国では国民的英雄の実在の武道家で精武館道場の創始者でもあり、中国拳法界の加納治五郎みたいな人。加納治五郎と同時代に生きた人物でもあります。(余談ですが、映画の中で精武館と敵対する日本人の柔術道場は”起倒流”という設定になってますが、起倒流は加納治五郎が創設した”柔道”の元になってる流派。チェンがこの道場になぐり込みをかけるシーンを良く見ると加納治五郎の写真を納めた額が飾ってあるのが見て取れます。)日本人の道場との試合で日本人を負かしたすぐ後に死んだので巷では”日本人に報復された”という噂が飛び交ったりしたそうですが、実際は肺結核だったらしいです。
霍元甲は英雄でもあるのでこの映画以前にも数々のストーリーになっているそうですが、この映画が作られて以降、日本人暗殺説を周到したものばかりになってしまい、中にはこの映画の主人公まで登場する作品も作られているようで、この映画が民衆に与えた影響は大きいですね。まあ史実ではないことが信じられているという事は日本人としてはちょっと残念なところもありますが、これが史実ではないにせよ、日本人が散々似たような酷いことをしていたのは事実ですから偉そうな事を言える立場ではないですね。そういう日本人も遠山の金さんが桜吹雪の入れ墨を人前でさらしたり、水戸黄門が印籠見せびらかして回ってたりする事が史実に反していることを知ってる人がどれだけいることでしょう、という感じですが、、。「怒りの鉄拳」も後100年くらい経ったら西遊記みたいに実話が元になっているとは思えないような話に拡大していくかも。。

柳の下のどじょうは何匹?

この映画の超ヒットに追随して多くのまがい物「精武門」映画が作られたようですが、続編やリメイクも作られてますね。
続編では、「新・死亡遊戯」や「ブルース・リーを探せ」「ブルース・リー物語」で知られている名前だけソックリさんのブルース・リィ主演で『精武門続集』という映画があります。(輸入店でアメリカ版ビデオを見かけたりしますが、私はみてません)鈴木を失った蛇口道場が新たな館長の元、一気に精武館を潰しにかかるのとそれと闘う眞の弟(リ)の話で、「怒りの鉄拳」で陳眞の兄弟子・范を演じた田豐が同じ役で出ていたりして、無断で作られた物ですが一応ちゃんとした続編にはなっているようです。”ブルース・リィ”の名前を見ただけで見る気が起きなかった映画ですが、ちょっと見てみたい気もします(^_^;)。
一方、身の危険を避ける為に台湾に逃れた麗兒のその後の姿を描いたのが『ジャッキー・チェンの新怒りの鉄拳』(新精武門)。キャサリン・ロスの『続・明日に向かって撃て』みたいな趣旨の作品でしょうか。台湾で偶然知り合った青年ジャッキー・チェンと共に精武館道場の再興を志す麗兒ですが、台湾にもやはり日本人は我が物顔でのさばっていて、皆殺しにされてしまうという救いの無い話。
こちらは「怒りの鉄拳」の羅維監督自らメガホンをとった作品ということもあり、制作当時この映画のポスターを雑誌で見て観たいなと思っていたのですが、長い間未公開でTVの深夜枠でひっそりオンエアされただけでした。あんまりひっそりだったので私は見逃してしまい、オンエア後に番組表にタイトルが載っていたのを知って、その後地方局でオンエア予定に入っているのを見ては残念がってました。最近になって『レッド・ドラゴン/新精武門』(レクター博士が出て来そうなタイトル(^_^;))の邦題でビデオ化された時はすかさず買ってしまいましたが、麗兒が台湾に落ち延びるまでの件やリー絡みのシーンが相当カットされているらしいメディア・アジア・バージョンによる広東語吹き替え版。まあ何れにせよ「怒りの鉄拳」には及ばない出来ではありますが、ジャッキー・チェンのアクションはそれなりに見るべき物もありますし、なによりノラさんが出てる(笑)。

リメイクではブルース・リャンが陳眞に扮したものとか、最近ではドニー・イェンが扮した物も作られていますが、日本に入って来ているのではジェット・リー主演の『フィスト・オブ・レジェンド/怒りの鉄拳』(精武英雄)がありますね。「怒りの鉄拳」のリメイクのはずがストーリーが全然違っています(^_^;)、陳眞が日本への留学生だったり、日本人だって悪い人間だけじゃないんだよという点が強調されすぎて、かなり日本寄りになっているのがちょっと不満足です。陳眞はなんとノラさんじゃなくて(^_^;)日本人と恋仲だし、当時は女子の入学は出来ないはずの京都大学に旧制中学の女学生姿の中山忍がいたりと時代考証が結構いい加減ですが、しかし関連作品の中では一番良くできているのではないかと思います。

主なバージョン

他のブルース・リー作品に比べ、「ドラゴン怒りの鉄拳」はSEテープがしっかり作成されている様で、バージョンによって劇的に内容が異なるという程の差異はありません。

ビデオ (最近のビデオはDVDコーナーをご覧下さい)

■国内版■

■アメリカ版■

CBS/FOXの物はコロムビア映画がリバイバルした時のプリントで、現在世に出ているソフトの中では最良のクオリティです。
GOODTIMESの物はナショナル・ジェネラル・ピクチャース配給によるアメリカ初公開時の物。初公開版とリバイバル版は配給会社のマークが違う以外の差違はありません。
リー映画の初DVD化となるDigital Multimediaの物もアメリカ初公開版ですが劣悪なマスターによる極悪なソフト(^_^;)。Good TimesのDVDはワイドテレビ&通常TVのマルチアスペクト対応のスクイーズ収録によるワイド版ですが、こちらも画質は良くありません。Madacyのものは正確にはカナダのメーカーが米国でも販売しているものですが、DMLのものより更にオソマツな代物。
最近リリースされたDVD-BOXセットに収録の物はLDと同じ物のようですが、リージョンコード1なので日本のプレイヤーでは再生できません。

米・泰盛ビデオから出ている北京語版ビデオは現在発売されているビデオソフトの中では最も制作当時のバージョンに近く、カンパニーロゴも当時の物がそのまま見ることが出来る物ですが、画質はそんなに良くはないです。一応ワイド版ですが、殆どスクイーズ状態の画面でワイドTVのワイドモードで見ると丁度いいかも。。字幕なし。

■香港版■

漸く発売された正規版VCD。音声は広東語のみ。中英文字幕付き。PALベースの画面サイズなので日本のプレイヤーでは若干縦長になります。

■台湾版■

北京語のオリジナル音声がノーカットで聞ける点で貴重なソフト。

■韓国版■

■中国版■

上記TVサイズ版と全く同じ品番ですが、マスターが違っています。裏表紙に「国/粤語對白」と表記されている物がこちら。2カ国語版、字幕なし。広東語音声は他のビデオと変わりませんが、北京語音声は上記TVサイズ版の北京語音声とは違い、新たに音楽、効果音がミックスしなおされていて音楽のタイミングが違っていたり、一部欠落があります。また、オープニング&エンディングはなんとマイク・レメディオスの日本版英語歌が流れます。このリミックス音声は後に出たDVDの音声とも違っているのですが、DVD用に作ったもののDVDには使用されなかった暫定ミックス版なのでしょうか?こちらもお座敷ストリップのシーンはカット。『危機一発』『死亡の塔』との3本パックのBOXセットでリリースされているVCDもあります。「狂龍系列之怒火狂龍」というタイトルで同社から最近発売されたVCDも同内容。

サントラ ※アナログ盤は全て廃盤です。

「ドラゴン怒りの鉄拳」Fist of Fury EP:東宝レコード YT-1060 1974

Side A: メイン・テーマ Fist of Fury   Side B: 愛のテーマ Love Theme from "Fist of Fury"

A面はマイク・レメディオスによる英語歌。これは他の収録ものも共通してますが、オープニングテーマ用に録音された物とフィナーレ用に録音された物とが間に本当のサントラ音源からのインストをはさんで繋げられてます。B面は愛のテーマのBGMに一部セリフをミックスしたものでサントラアルバムには未収録のバージョン。

「ドラゴン怒りの鉄拳」Fist of Fury LP:東宝レコード YX-7001 1974(再発:ビクター LP:VIP-7304/MT:VCW-1717 1981.7.21)

Side A: 1. ドラゴン怒りの鉄拳(メイン・テーマ) Fist of Fury (Main Theme)   Side B: 1. 愛の誓い I Love You as Much as I Always Do
2. 恩師の死 The Death of Teacher   2. 怒りの鉄拳 Fist of Fury
3. 我々は弱者でないWe Are Not Sick Men   3. 大団円 Finale
4. 上海を去るべきか Leave Shanghai   4. ドラゴン怒りの鉄拳(フィナーレ) Fist of Fury (End Titles)
5. 別れの夜 I Shall be Waiting Here      
6. なぜ先生を殺したのだ Why Do You Kill My Teacher      

写真はビクターからの再発盤の方。英語吹き替え版からのサントラ音声。セリフ中心ですが、各トラックの後ろにBGMがまとめてちょろちょろっと入っていたりします。これら日本盤サントラは全て秋山将志さんのいう方のサウンドプロデュースによって制作されてます。「愛の誓い」などは本編で実際に使われているオリジナルの愛のテーマのBGMを消して、新録音された物をかわりに流しているという手の込んだ事をしてますが、そういう芸当が出来るのなら、オリジナルのBGMだけ抜き出したレコードも作って欲しかったですよ、秋山さん。(^_^;)

「ブルース・リーの世界」 World of Bruce Lee LP:東宝レコード YX-6095〜6 1974

Disc1 Side 1: 1. 燃えよドラゴン Theme from "Enter the Dragon"   Side 2: 1. ドラゴン危機一発 The Big Boss (Main Theme)
  2. 高僧 The Monk   2. 愛と慰め Consolation
  3. 大激闘 The Big Battle   3. 正義の鉄拳(メイン・テーマ) Fist of Justice (Main Theme)
  4. ハンの要塞島 Han's Island   4. ドラゴン危機一発(愛のテーマ) Love Theme from "The Big Boss"
  5. 竹牢破り Banboo Bird Cage   5. 氷室の激闘/復讐の誓い The Battle at the Factory / Plegde to Revenge
  6. ドラゴン怒りの鉄拳 Theme from "Fist of Fury"   6. 死闘/鋼鉄の男 The Life or Death Struggle / To be a Man
           
Disc 2 Side 3: 1. ドラゴン怒りの鉄拳(メイン・テーマ) Fist of Fury (Main Theme)   Side 4: 1. 真相 The Truth
  2. 恩師の死 The Death of Teacher   2. 愛の誓い I Love You as Much as I Always Do
  3. 我々は弱者でないWe Are Not Sick Men   3. 怒りの鉄拳 Fist of Fury
  4. 別れの夜 I Shall be Waiting Here   4. 大団円 Finale
  5. なぜ先生を殺したのだ Why Do You Kill My Teacher   5. ドラゴン怒りの鉄拳(フィナーレ) Fist of Fury (End Titles)

2枚組によるコンピレーション盤。DISC1のA面が燃えよドラゴンのカバー集、B面が「危機一発」のダイジェスト、DISC2は丸々「怒りの鉄拳」のサントラという構成でした。DISC2は単独のサントラアルバムとは内容が異なり、「上海を去るべきか」が削除されている代わりにオリジナルのサントラでは未収録の「真相」(チェンがウーを襲うシーン)が追加されています。
A-6の「怒りの鉄拳」はサントラではなくカバー、下の項参照。

その他

4曲入りマキシ・シングル。A-1はカバー。B-2は短縮版。

 

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Last Modified 17, Oct. 2001 takeboh@takeboh.com